マッド美術



まだ私がエネルギー溢れる高2の頃。

とんでもない男の美術の先生がいました。

いかにも変態的なオーラを発していた事だけははっきりしています。

最初の授業の時、始業の礼の仕方から細かい指導が入りました。

「授業時間になったら必ずせきついてぇ〜、静かに待っていることぉ。

 始業のあいさつは、席の右側に立ちぃ、日直が礼と言ったら体を90度曲げる。

 そのまま1,2で頭を下げ続けて、3でもどすぅ。

 わかったぁ?」

イントネーションのおかしい声で余計やる気をなくしました。

そして練習をさせられた後、座り方など些細な事まで話し(私達は小学生か!?)、最後に授業の方針を話しました。

話が曖昧でよく分からなかったのですが、一番強調してたことは 「授業害」は絶対するなということらしい(黒板にそう書いた)。

どうも私たちに暴れてほしいみたいです。

授業終了ベルが鳴ると、最初にいったあいさつの方法で礼をしました。





次の週。

いやいやながらも、余計な揉め事は起こしたくないので始業のベルとともに席につきました。

先生が来ないので、先週言われた礼の仕方を練習してました。

・・・

10分が経過。

ところが先生が来る様子は無し。

もう少し待とうと誰かが言ったので授業時間が短くなってラッキー待つことに。

・・・

さらに10分が過ぎました。

しかしまだ来ない。

しびれを切らした美術係が先生を呼びに職員室へ行きました。余計な事を

・・・3分後申し訳なさそうに美術係と一緒に走ってくる先生。

「ごめんねぇ。授業無いと思って寝てたよ

永遠に寝てればいいのに

その上日直が「起立」と言うと、

「時間無いからいいですわ」

と、早速授業をはじめる事に。

この日以来、始業の礼は時間の無駄だ、と省かれるようになりました。

だったら最初から礼の仕方を教える必要ないじゃん。




それから月日は流れる・・・

ある日のこと、美術の授業で先生が激怒した事件がありました。

事の発端は始業直後、私の隣りのO君が

「先生、トイレに行きたいんですけど」

と言ったのが始まり。

すると先生いきなりスーパーサイヤ人に変身。

「おぉまえは、俺の授業を妨害する気だろ」

当然O君は反論。

「そんなつもりじゃないですよ」

「おまえは授業を受けたくないからさぁ。

 授業を妨害したい気持ちがトイレに行きたくさせてるんだよぉ!!

すごい被害妄想だな、オイ。

しかも「授業防害」と堂々と書いた先生が使役構文&擬人法を使うくらいだから、かなり本気のようです。

「何言ってるんですか」

「いいや、そうに決まっている」

先生は彼の席の隣りまで歩み寄って来ました。

「俺の授業を邪魔したいから、トイレに行きたくなるんだよぉ」

「だから違うって言ってるじゃないですか」

「お前は授業を妨害したいから、トイレに行きたいっていうんだよ!!」

「だから・・・」

同じことを何度も執拗にくりかえす先生。

しかも言葉を発するたびに深呼吸をするのが情けないです。

必死で否定するO君。

隣りで聞いてる私はたまったもんじゃありません。(笑っちゃダメだ、笑っちゃダメだ・・・)

かたくなに否定する生徒(当たり前か・・・)に対し、攻めあぐねる教師。

だんだん声が上ずってきて攻撃力が弱くなっていきます。

すると先生は弱々しく上ずった震えるような声で、

土地の神様が・・・」

は?

「おまえには土地の神様がついているんだぁ」

医者だ!だれか医者を呼べ!!

ついに狂いやがった。 しかもアクセントが 「とちのみさま」




その後も先生は

「おまえにはとちのみさまがついてるんだから強いんだよな・・・」

とちのみさまに守られてるんだよぉ!!」

頼む、誰か助けてくれ。死ぬ、笑い死ぬ!!

これは新種の拷問ですか?





ちなみにこの先生、翌年(気が触れて)自主退職しました。







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